今朝、市場でぼ〜っとしてたら突然クニサワさんのことを思い出した・・・・・
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クニサワさんは俺が大学に入った年に住んでいた学生寮の2年先輩である。
クニサワさんはたぶん生意気な1年坊主の俺のことを嫌っていたハズなんだが
どういう訳かいつもツルんで行動することが多かった・・・・・・
あの日も朝早くに(といっても10時頃)クニサワさんがドヤドヤと俺の部屋に押しかけてきて
ハンマーみたいな拳骨で俺の部屋のドアをガンガン叩きつけ
(あの頃住んでた寮は鉄筋コンクリートの4階建てで部屋のドアは鉄板だった・・・・
当然風呂ナシ。トイレと炊事場は共用。各部屋はなんもなしの4畳一間・・・・まるで刑務所・・)
「おらッ!起きんかい!パチンコ行くぞッ」と怒鳴りつけてきた。
生意気な一回生の俺はタメ口で応戦・・・・・・
「なんや・・パチンコも一人でよう行かんのか?
俺は眠たいんじゃ・・・・ほっといてくれ!・・・・」
するとクニサワはグローブのような手で俺のアタマを掴むといきなりヘッドロックに極める
・・・・・頭蓋骨がミシっとイヤな音を立てる・・・・・・
「ん?行きたくないんか?・・・・・」
「うううううう・・・・・行きます・・・・行かせていただきます・・・・お供します・・・」
そんなやりとりをしてから俺達は電車で淡路までパチンコをしに行った・・・
あの頃のパチンコはまだ手動と自動が半々くらいで俺達は手動のパチンコ台で
シコシコと玉を弾いていたが、出玉は一進一退を繰り返し一向に溜まる気配を見せない。
そのうち二人とも有り金叩いて買ったパチンコ玉を使い果たして
どうするべ?・・・・・ということになった・・・・・
そういえば今日は土曜日ではないか?
当時、銀行のキャッシュコーナーは土曜は午後2時で閉まる仕組みになっていた
しかもその機械は梅田にしか置いていない(よう考えたら、不便やったのおお・・・)
俺達は脱兎のごとく駆け出して電車に飛び乗り梅田に向かった・・・・
目指すATMの機械の前にたどりついたら長蛇の列!・・・・うわッどないしよ・・
じりじりしながら自分達の番が来るのを待っていたら
俺達の一人前の人の時に無常にも本日終了の知らせのフダと共に機械のシャッターが降りてしまった
俺達は意気消沈して帰りの電車に乗り込む・・・・・・・・
クニサワさんが車窓を流れる景色を見ながら独り言のように言う
「トネ・・・・いくら持っとる?・・・・・」
俺はジーパンのポケットに手を突っ込んでコインを取り出す
「160円や・・・・・・クニサワさんは?・・・・・」
「ん!・・・・・・ワシは200円や!・・・・・・・」
それからおもむろにクニサワさんは言い放つ・・・・・
「二人で360円か・・・・・C定食が食えるな(当時、関大の学食の一番安いC定食は180円だった)」
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俺達は学食でC定食を食べ、関大裏の坂をとぼとぼと下って寮に帰り着き
各々の部屋に戻っていった・・・・・・・
月曜の朝までどうやって飢えを凌いだのか今となってはあまり記憶にない・・・・
でもこれだけは良く覚えている・・・・・・
あの頃、どんなに金がなくてもちっともみじめでもなかったし不安でもなかった・・・・・
ただ生きている・・・・・それだけでとてもとても楽しかった・・・・・・
クニサワさんは今頃どうしているんだろうか・・・・・・・
確か故郷の高知県で県職員になっているはずだけど・・・・・・・