Nという男はすべてを飲み込んでしまういわば−ブラックホール−のようなヤツである・・・
学生時代にとある事情から自主休学を余儀なくされ前期・後期の試験を全く受けない年があった
それゆえ次の年は1単位も落とせないという立場に追い込まれた・・・・・・
そんな窮状を知ってか知らずかわさわさと連日悪友どもはヤツの下宿に集まってきた
夕方からマージャンが始まり朝まで続く、Nは単位を落とせないので学校へ行く
俺達は昼過ぎまで寝る・・・・夕方になるとマージャンが始まる・・・朝になる
Nは学校へ行く・・・・俺達は寝る・・・・その繰り返し・・・・・・
こうなるともう「子犬を寝かせないでおくと何日間で死に至るか?」という実験を
人間でやっているようなものである・・・・・・
Nは毎日1〜2時間の睡眠を細切れにとるだけで俺達に付き合った・・・・・
そしてこの一週間でトータル10時間足らずしか寝てないという日の夕刻
俺は当時俺がバイトしていた「メイク・ラブ」という怪しげな店にNを連れて行った
カウンターに座ったNを見て、マスターが俺にささやく・・・・
「やっちゃん・・・ナ○ヤ○ちゃん、えらい顔色わるいで・・・土化色やんか・・・
アンタらいったい何してんの?!」
その日の帰り道、俺はNを叱り飛ばした
「お前は『イヤ』という言葉を知らんのか?!
みんなに今日は来んといてくれと言うたらええんやないか!死にたいんかお前!」
その言葉を聞いたNはニシャニシャ笑うばかりであった・・・・・・
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あれから30年以上の時が経ち・・・・・・
今度はそのNが
ラソン大会に代理で駆り出され挙句の果てはそこそこの記録で完走してしまう
弟子のウッスンに対して同じ言葉を投げかけている
「お前は『イヤ』という言葉を知らんのか?!」
Nのブラックホールのような性格のDNAは確実に受け継がれている・・・
そしてマラソン大会の打ち上げで集まった店では
カウンターの中で
「いっやーッおもろいわ〜!このネタで今年いっぱいは笑えるなあ〜!」
と、R子姉ソックリのオチの姉ちゃんがカンラカンラと豪快に笑う
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・・・・・・・・・・・ここにもNをとりまくDNAが・・・・・・・