大学に入学した時に入った学生寮では隣の部屋が4回生のオガタさん
2階の同じ階にはいつもヘラヘラしている3回生のワカメと
髪の毛を腰まで伸ばしているハナイさん・・・・・・
3階には3回生のクニサワさんとスギタさん、その他もろもろが居て
4階の住人とはほとんど交流がなかった・・・・・・
部活は奇術クラブに入ってフジキ君と仲良くなり
そのフジキ君の下宿の隣の部屋の住人のマツウチ君とも仲良くなった
ここに浪人時代からのツレのNやバンバがからんでくる・・・・
そんなところが俺の学生時代のスタートだった・・・・・
学校にはほとんど行かなかったけどいつもいつも男連中とツルンで
いたわけでもなくちゃんと女性にも人一倍興味はあった・・・・
今日は恋愛の話をしよう・・・・・・
高校時代にクラスで女子生徒に隠れて男子だけで人気投票をすると
いつもかならず1位に輝くS子ちゃんという子がいた・・・・
高校を卒業する数日前、どういうわけかそのS子ちゃんと教室で
二人きりになるタイミングがあった・・・・S子ちゃんは東京の大学に進学が決まっていた
俺はあえなくというより予定通り浪人することになっていた・・・
俺は当時はそんなにS子ちゃんのこともたいして意識していなかったから
二人は軽口を交し合う仲だったんだけど
S子ちゃんのほうから「下宿先が決まったら手紙頂戴ね・・・・」
とS子ちゃんの東京での下宿先が書かれた紙を渡されたのだ・・・
おいおいおい・・・・・これって、もしかして?・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とたんに小鼻が膨らんでしまうヤスジ少年であった・・・//143856
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俺は神戸の月見山で浪人している時も何回かは10円玉をポケットにいっぱい詰めて
公衆電話のボックスの中からS子ちゃんに電話したりしていた・・・
手紙も送ったような気がする・・・・・・
そして翌年、俺はなんとか関大にもぐりこむことができて
晴れてS子ちゃんとデートすることが可能になった・・・
何度か電話のやりとりをした後、5月の連休に俺は喜び勇んで
東京のS子ちゃんに会いに行ったのだ・・・・・・
右も左も上も下も全くわからない無手勝流の俺は宿の手配すらできなくて
最初の晩は東京の親戚の家に頼み込んで泊めてもらった・・・・
翌日はいよいよS子ちゃんと初めてのデートである
だいたいど田舎から出てきたまさしく洟垂れ小僧の俺はその時まで
まだ一度も女性とは手も繋いだことがなかったのだ・・・
その鼻息の荒さは想像に難くない・・・・・
俺とS子ちゃんは当時の後楽園遊園地に出かけて行った・・・
そして楽しい時間はあっという間に過ぎて行き
街には夕闇が迫ってくる・・・・・・・
別れがたい雰囲気だったので夕ご飯も一緒に食べることにした・・・・
それでも時間は残酷にも若い二人を切り裂こうとじりじり迫ってくる
俺たち二人はとぼとぼと駅の改札口に歩いていった・・・・・
その時、S子ちゃんが消え入りそうな声でこう言ったのだ
「帰らないでおいたら・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・???
!!!!・・・・・・おいおいおい!・・・・なんだ?!この展開は!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は近くの公衆電話に飛びつき、親戚の家に電話して今夜は友達の家に泊まるから
帰らないと告げてS子ちゃんの元に戻ると・・・・
「にゃははは・・・・これで帰れなくなっちまったよ・・・・」
と照れ笑いを隠しもせずにS子ちゃんに告げた・・・・・・
カバンの中には万が一の場合を想定して深夜にこっそりと道端の暗がりに置いてある
自動販売機で買ったゴムが忍ばせてある・・・・・・・・
もう心の中はブラジル・リオのサンバカーニバルのようなドンチャン騒ぎだ
・・・・・・・・・ヤスジ少年・・・・二十歳になったばかり//143894
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翌日の朝までS子ちゃんと一緒に居られるということは決まったものの
東京という外国のような土地で田舎の少年&チェリーボーイの俺は
何をどうしたらいいのかさっぱりわからず途方にくれた・・・・
とりあえずは深夜営業の喫茶店に入ったもののそのうち話題も尽き果て
S子ちゃんと俺の間にはしらけた空気が漂い始めた・・・・
3杯目のコーヒーをおかわりしてそのコーヒーが冷たくなりかけた頃
眠そうな顔をしている俺にS子ちゃんがため息混じりにこう言ったのだ
「アタシの部屋に来る?・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!
キタァ〜〜〜!!・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺の心の中では再びサンバのリズムが大音響で鳴り出した・・・・
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俺とS子ちゃんはタクシーでS子ちゃんの下宿へ行き
俺は脱いだ自分の靴を両手にぶら下げ大家さんの部屋の前の窓ガラスの下を
かがみながら通ってS子ちゃんの部屋に入れてもらった・・・・・
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俺たちは二人ともそういう大人の行為というものに経験がなくて
生まれて初めてのキスはチェリーボーイの俺には途方もなく刺激的だったが
いざ本番となると何をどうしていいのかさっぱりわからず
そこに慣れない土地での前日からの緊張による疲労がどっと押し寄せてきて
俺は不覚にもそういった行為は未遂のまま眠りに落ちてしまったのだ
眠りの途中で俺の五月蝿いいびきに閉口してS子ちゃんが何回か俺の鼻を
つまんだような気もするがとにもかくにも否応なしに朝が来てしまった・・・
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俺が少ない睡眠と昨日の甘いキスの感触でぼ〜っとしていると
机に座ったS子ちゃんが
まるで患者にガンの告知をする医者のような冷たい声でこう言ったのだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あたし、アナタのことは好きだけど
・・・・・・・やっぱり・・・一番好きじゃないわ・・・・」
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?!・・・・・!!!!!!!!!!
おいおいおい!!!・・・・・・・・・そりゃあないぜ、セニョリータ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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ヤスジ、二十歳になったばかり・・・・・・
天国から地獄に落ちた一瞬・・・・・・・・・・・・//143943