学生時代、深夜に牛丼を二つ買ってNの下宿を訪れたことがある・・・・・
携帯電話なんて影も形もない時代だ・・・Nが自分の部屋に居るかどうかなんて全く分からない
Nが居たら一個ずつ、まあ居なくても自分で二個食べればいいやと思っていた
Nは部屋に居た・・・・・ところが腹を抱えて苦しんでいた・・・・・
あの我慢強いNがうめき声を上げて七転八倒している・・・
後になって分かったことだがどうやら痛みの原因は「胃カタル」という症状だったみたいだ
とにかくNは「痛い!痛い!・・・・」とうめきながら苦しんでいるし
かと言って俺に医学の知識があるわけでも無く手をこまねいているしか仕様がなかった・・・
「痛いか?」と聞くと「痛いわい!!」と怒鳴り返される・・・・・
Nはあの時のお前の慈愛に満ちた眼差しを俺は一生忘れないと述懐する
まあ心の中では多少の「うふふ」があったということは否めない・・・
俺はお茶を煎れてNに問いかけた・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・「牛丼、食うか?」
Nの返事はこうだ・・・・・・・・・・・・・
・・・「食うわい!!!!」・・・・・・・・いやしいヤツめ・・・・
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どんなに腹が痛くても救急車を呼ぶわけでも無く、さらに牛丼まで平らげる・・・
あの頃の俺たちは本当に生命力に満ち溢れていた・・・・
「ホンマにお前は殺しても死なんやっちゃな!ゴキブリよりしぶとい!」
とお互いを指さして言い合ったものだ・・・・
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腹が痛いから絶食する・・・・・いつから俺はこんなに柔な男になってしまったのだろう?・・・・