「なあ、シュウちゃん・・・・いっぺん三六萬、放ってみいひんか?・・・・」
俺は独り言のように対面に座るシュウちゃんに語りかける・・・・・
シュウちゃんは自分の手牌に視線を落とし無言で考えを巡らせている
俺は卓の上に置いた自分の言葉をそろりと引っ込めた・・・・・
数巡前に俺の上チャに座ったNがリーチをかけているのだ
俺はそのNの河をみているうちに不意に三六萬の待ちが頭に浮かんできた
理論的な確証は何も無い・・・・・ただの山勘である・・・・・
ツモは進み、結局その局は流局となった
流局となったらリーチをかけた者は自分の待ちを開示しなければならない
俺はNの目を覗き込んで聞いてみる
「何の待ちや?」・・・・・・
Nはうめくようにゴニョゴニョと「三六萬・・・・」と応える
かぶせるように俺が「え?何の待ち?」と再び聞くと・・・・
「三六萬・・・・」と口をモゴモゴさせる
「え?よう聞こえんなあ・・・何の待ち?」と俺は執拗に責め立てる・・・
ついにNは怒り出して
「んもうッ!しつこいなあ!三六萬じゃ!・・・・たくッ!!!」
と怒鳴り返してきた・・・・・
俺は満面の笑みを浮かべてケラケラと笑いながら山を崩した
他者のリーチに対してその待ちを一点読みで言い当てるのは至極の喜びである
ましてやその相手が長年の仇敵であるNだとなると喜びは倍増だ
かくして俺たち爺さんのマージャン大会は深夜まで続いていった・・・・・・
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火曜は奈良の信貴山というところの旅館で集まることになった・・・・
俺は昼前に福井を出てナビ様の言うとおり旅館を目指す
40年前の唄を聞きながらクルマを飛ばし40年来の友人達に会いに出かけた
旅館は山の上にあるみたいだったので鉄道を使わずにクルマで行ったけど
よくよく考えてみればセンセが奈良に居るのだから奈良駅まで鉄道を使って
ヤツに迎えに来てもらえば良かったのだ
そうすれば電車の中でビールも飲めたし本も読めたし何より身体が楽だ
そのことに敦賀を過ぎたあたりでようやく気がついた・・・・
なんというボーンヘッド・・・・・・
まあでもあの旅館はマージャンで集まるにはなかなかいい条件だった
これからは年に何回かは集まることになりそうだ
その時にはセンセに奈良駅まで送迎してもらうとしよう