夢遊病者のように走る・・・・・
巷では「ゾーンに入る」という体裁のいい言葉を使うみたいだが
実際に走っているへなちょこランナーにしてみればそんな格好のいいものではない
俺はフルマラソンを走る時はなるべくこの「ゾーン」に入れるように願って走る
息も苦しくなく、身体はどこも痛みが無く、足は重くも軽くもない
速度は速くも遅くもなく、ただただ一定の速度を保って前に進む
42・195kmも走っているとそんな状態になることが何度かあるのだ
そんな時に脳裏をかすめるのはいつも同じ考えだ
「この調子なら100kmでもいけるんじゃね?」・・・・・
ところが現実はそんなに甘くなく、しばらくすると地球の重力が俺の肩にだけ不公平にかかっているのではないか?!と思えるくらいに身体が重くなる
そしてついには心が折れて歩き出す・・・・
だが、フルマラソンを50回以上も経験している俺は
ここからがフルマラソンなのだということを知り尽くしている
少しだけ歩いて足の筋力を休めたらまた再び走りださなければならない
どんなにゆっくり走っても歩くよりは早いのだ
そして歩いていたのでは制限時間内にはゴール出来ないのだ
俺は再び夢遊病者のように走り出す・・・・・
今度はもう「この調子なら100・・・・・」などという考えはよぎらない
ただひたすら自分の前にゴールが現れることだけを祈っている
それがフルマラソンだ